主人公

時には思い出ゆきの
旅行案内書にまかせ
"あの頃"という名の
駅で下りて"昔通り"を歩く
いつもの喫茶には まだ
時の名惜りが少し

地下鉄の駅の前には
"62番"のバス
鈴懸並木の古い広場と
学生だらけの街
そういえば あなたの服の
模様さえ覚えてる

あなたの眩しい笑顔と
友達の笑い声に
抱かれて 私はいつでも
必ずきらめいていた

"或いは""もしも"だなんて
あなたは嫌ったけど
時を遡る切符があれば
欲しくなる時がある
あそこの別れ道で
選びなおせるならって

勿論 今の私を
悲しむつもりはない
確かに自分で選んだ以上
精一杯生きる
そうでなきゃ
あなたにとても
とても はずかしいから

あなたは教えてくれた
小さな物語でも
自分の人生の中では
誰もがみな主人公
時折思い出の中で
あなたは支えてください
私の人生の中では
私が主人公だと



Credits
Writer(s): Masashi Sada
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