9月になること

いらなくなったあの首振り固定の扇風機
買わなくなった安っぽい甘ったるいアイスキャンディー
8月になれば全て蘇る気がしたんだ 何もかもあたかも元通りになって

忘れたい筈のあの言葉だけは忘れない様に出来ている脳

変わっていったあの白昼夢の堂々巡り
さらっていった揺れの不安定気な観覧車
9月にさえなれば全て笑える気がしたんだ
何もかも身も蓋も無い話になって

「南へと向かうあの人の影に私の足で追い付きたいの」

過ぎ去った夏が作り出した あの透き通ったあなたを思い出した
焼けた海岸線、割れた蛍光灯、汗ばんだ掌
過ぎ去った夏が作り出した ぶっきらぼうな夜を少し恥じた
あなたへの想い、声、恋、遠い距離が重なって重なって

錆びついていたあの日乗り捨てた白い自転車
漕がなくなった分、背負うものも減ったジレンマ

過ぎ去った夏が作り出した あの透き通ったあなたを思い出した
焦げたチョコマフィン、溶けた銃口、モノクロのリタ・ヘイワース
過ぎ去った夏が作り出した ぶっきらぼうな夜を少し恥じた
あなたへの想い、声、恋、遠い距離が重なって重なって

雨上がり蒸し返す空気、蝉の鳴き声
汗をかいた瓶サイダー、それとあなたの

過ぎ去った夏が作り出した あの透き通った肌を思い出した
泣けた海岸線、開けた心臓、繋がっていた点と点
過ぎ去った夏が作り出した ぶっきらぼうな夜を少し恥じた
あなたへの遠い遠い遠い遠い距離が重なって重なって



Credits
Writer(s): 小池 貞利
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