横断歩道を渡る人たち

目の前を横切ろうとするその老人の背中はひどく曲がっていて
歩く姿をじっと見ていると足が不自由であることがわかる

かばい続けてきた足のせいか それとも
思うように動かぬ現実にへし曲げられた心が
背中まで歪めているのだろうか?

横断歩道を渡る人たち
僕は信号が変わるのを待っている
昨日の僕が 明日の僕が
今 目の前を通り過ぎていく

目の前を颯爽と歩くその女のスカートはひどく短くて
ついつい目が奪われてしまう 強い風でも吹かぬものかと
そんな視線に気が付いたら きっと彼女は僕を睨みつけてくるだろう
「自分の為にしてるだけ」だと
「誰かの気を引きたいわけじゃない」と

横断歩道を渡る人たち
僕はハンドルを握り締めて見ている
昨日の僕が 明日の僕が
今 目の前を通り過ぎていく

イライラした母親はもの分かりの悪い息子の手を引っ張って
もう何個も持ってるでしょ!? と おもちゃ屋の前で声を上げている
欲しがっているのはおもちゃじゃなく愛情で
拒んでるのも「我慢」を教えるための愛情で
人目も気にせず泣いて怒って その親子は愛し合っているんだ

横断歩道を渡る人たち
僕はフロントガラス越しに見ている
昨日の僕が 明日の僕が
今 目の前を通り過ぎていく

ギターケースを抱え歩くその少年は仲間と楽しげに話している
好きな音楽の話か それとも好きな女の子の話か?
そのギターで未来を変えるつもりかい? それならいつか仲間に入れてくれ
僕だって何もかもをもの分かりよく 年老いたくはないんだ

横断歩道を渡る人たち
僕は信号が変わるのを待っている
昨日の僕が 明日の僕が
今目の前を通り過ぎていく
昨日の僕が 明日の僕が
今目の前を通り過ぎていく



Credits
Writer(s): 桜井 和寿
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