Ajisai

あじさいの花がひとつ咲いていました
小雨まじりの梅雨の宵
鉄道線路行ったり来たり

可愛いひとがひとりきり立っていました
いたずらそうなくちもとが
春の風を強請るんです

西洋看板並ぶ通りに薄い霧が降りて来て
そっと手を引かれるまま暖簾をくぐりました

二階の窓の簾越しやまぶきが覗けば
花は咲けども実はならず
湿った空に溶け出します

可愛いひとはぼんやりと畳を見つめ
ふっと夜が横切れば
白い笑顔見せるんです

さいだぁのストロオに細い指をからませて
遥か遠い蜃気楼できみが笑いました

濡縁側に花鋏うち捨てられて
畳の目からにじみ出す花を切るの忘れてます

さいだぁのストロオに細い指をからませて
遥か遠い蜃気楼で袖を引かれました



Credits
Writer(s): Keiichi Sokabe
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