Diamant

怖がりな少年 どんどんギターを歪ませた
他人は少しも 解ってくれなかった
5Wのアンプが なるべく小さく絶叫した
閉め切った窓 三日月が覗いてた

布団被ってイヤホン ラジオなかなかのボリュームで
キラキラした音が 体を走り回った
大好きなシンガー なんで好きなのか解らない
目を閉じれば すぐ側にいた 確かに

その声とこの耳だけ たった今世界に二人だけ
まぶたの向こう側なんか 置いてけぼりにして

どこにだって行ける 僕らはここにいたままで
心は死なないから あの雲のように遠くまで
何にだってなれる 今からだって気分次第
退屈なシナリオも 力ずくで書き直せる

何も知らないんだ 多分 全然足りないんだ まだ

「常に誰かと一緒 似たような恰好 無駄に声がでかい」
「話題は繰り返し ジョークはテレビで見た」
「語り合い 励まし合い ケンカする 仲間が大事」
そういうのを見下している 腹の底

怖がりな少年 どんどん自分を強くした
キラキラしたものの 裏側を疑った
変わってしまったシンガー 昔のようには歌わない
がっかりした そのうちなくした 興味を

易々と気は許さないさ 紛い物ばかりに囲まれて
まぶたのこちら側で ずっと本物だけ見てる

大勢の人がいて ほとんど誰の顔も見ない
生活は続くから 大切な事だってあるから
情報が欲しくて ドアからドアへと急いで
心は待てないから どうせ雲のように消えるから

何も知らないんだ 多分 全然足りないんだ まだ

変われなかった少年 昔のようには笑えない
そういう意味では 変わったと言えるのかも
何に勝ちたいのか どんどん自分を強くした
解ろうとしないから 解ってくれなかった

変われなかったシンガー 同じ事しか歌えない
それを好きだった頃の自分は きっと好きだった
5Wのアンプが 小さいながらも絶叫した
目を開けたら 全てを側にいた 未だに

懐かしむ事はない 少年はずっと育ってない
昔話でもない 他人事でもない でもしょうがない
何にだってなれない 何を着ようと中身自分自身
読み馴れたシナリオの その作者と同じ人

アンプは絶叫した 懸命に少年に応えた
シンガーは歌った イヤホンから少年へと
どこにだって行ける 僕らはここにいたままで
心は消えないから あの雲のように何度でも

何も知らないんだ 多分 全然足りないんだ まだ
その声とこの耳だけ この声とその耳だけ



Credits
Writer(s): 藤原基央
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