光と闇の童話

Und nur die heis ist ubrig geblieben

【Das Marchen des Licht und Dunkel(光と闇の童話)】

「そこ、足下に気をつけて」「うん」
「大丈夫？怖くないかい？」
「ええ。それより私 今とてもドキドキしているわ。
だって森は、世界は こんなに広いんですもの」
「じゃあ、今日はとっておきの場所を教えてあげるね。
「行こう！」「うん！」

「うあぁぁぁああ！！」『3(ドライ) 2(ツヴァイ) 1(アインス)』

見上げれば 丸い夜空
揺らめく 蒼い月夜
神の名を 呪いながら
奈落の 底で唄う...

盲(めし)いた 闇で 彼が
光だと 思っていたのは
誤りで
その 温もりの名は
愛だと 後に知った

初めての 友達は
碧い瞳の 可愛い 女の子(メートヒェン)
お別れさ
その 切なさの名が
恋だと 遂に知らず

花に 水を遣るように 儘(まま)
罪には 罰が要る 嗚呼
やがて《迎宵(グーテン･アーベント)》
疾(は)しる《第七の物語(ズィーベン･メルヒェン)》
摂理(かみ)に 背を向けて―『3(ドライ)
2(ツヴァイ) 1(アインス)』

見下ろせば 昏(くら)い大地
揺らめく 紅い焔尾(ほのお)
母の瞳に 抱かれながら
奈落の 底へ堕ちる...

「サビレタ村... マルデ墓場ネ... フフフ」
「エリーゼ、童話は、何刻だって墓場から始まるものさ... 」

何故 コノ 村ニハ 今 誰モ イナイ ノ？
―其れは 昔 皆 死んじゃった からさ
ジャ... 何故 昔 村人 皆 死ン ジャッタ ノ？
―其れは 黒き 死の病(やまい) のせいさ
ジャ... 何故 ソノ 森ノ村ニ 母子(おやこ)ハ イタ ノ？
―其れは 或(あ)の 【イド】が 呼んだ からさ
ジャ... 何故 【イド】ハ 何ノ為ニ 人ヲ 呼ブ ノ？
―其れこそが 奴の本能だからさ

嗚呼
墓穴 掘っても
掘っても 掘っても
必死に 掘っても キリがない
「悲惨な時代さ」

嗚呼 死体と土塊(つちくれ)
死体と土塊(つちくれ) 死体と土塊
多重菓子(ミルフィーユ)
「無惨な事態さ」

生命の目的は
《生キル事》と《増エル事》
殺セと 侵セと
【イド】は唄う

「増エスギテモ 結局、宿主ヲ殺シテ シマウノヨネ」
「人と大地の関係と同じさ... さあ、 物語を続けようか」

夜露に濡れた
苔藻(こけも)を 踏み鳴らす

少年の
その足取りは
哀しい程に 軽く

少年を
呼び止めた 声は
下卑(げび)た 響きで
されど 彼はまだ 知らない

嗚呼
世界の 作為など
世間の 悪意など
何ひとつ 触れぬまま 育ったから

友達を 抱いたまま →
招かざる 客を連れ →
優しい 母の元へと → そして...
見渡せば―

鳥に 羽が有るように 儘(まま)
夜には 唄が在る 嗚呼
いずれ《迎暁(グーテン モルゲン)》
染まる《薔薇の庭園(ローゼン ガルデン)》
摂理(かみ)を 背に受けて―『3(ドライ)
2(ツヴァイ) 1(アインス)』

「君が今 笑っている、
眩い 其の 時代に。
誰も恨まず、 死せることを 憾(うら)まず、
必ず 其処で逢おう」
～『光と闇の 童話(メルヒェン)』

「第七の墓場 さあ、復讐劇の始まりだ」「アハハハハハ―」