囘想列車

茜色が染める列車
車内シートには僕1 人
ゆらゆらと燃ゆる思い火を
消そうと涙は頬伝う
君が別れを告げた時のことを
何度も繰り返して
囘想列車は僕を揺らす

駅前ローカル格安の自販機で
一本のコーヒーを買って列車を待つ夜
ボロボロの片耳が壊れたままのイヤホンは
記念日に君がくれた唯一の贈り物なんだ

酔いどれに狂った奴らが暴れ出す頃だから
約束の時間より早く着いておこう
そんなこと思った時片耳のイヤフォンに鳴り響いた
通知に「ごめん、今日調子悪くなっちゃったの」

そういえば少し前から気付いてたんだけど
あの時終わった2 個下の彼とは今もまだ会ってるんだね
一度目は許してあげたのにね

真っ暗な景色と車窓に映った冴えない僕1 人
ゆらゆらと揺れるつり革をぼんやり眺めてみる
もしかしたら
「やっぱり会いたい」なんて淡い期待抱いて
各停列車は僕を揺らす

ねぇ、なにが足りなかったの?
なにが不安だったの?
考えてみれば君はおかしくないかい?
一度目の間違いは僕が許してあげたのにね

真っ暗な景色と車窓に映った冴えない僕1 人
ゆらゆらと揺れるつり革を手汗ごとぐっと握りしめる
もしかしたらなんてよぎったひどい妄想を振り払って
快速列車は あ

茜色に染まる列車 車内シートには僕1 人
ゆらゆらと燃ゆる思い火を消そうと涙は頬伝う
君が別れを告げた時のことを
何度も繰り返して
囘想列車は僕を揺らす

僕を乗せて
最終列車を逃したんだ



Credits
Writer(s): 菊池陽報
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