グッド・バッド・バイ

残りあと三分半だった
もう二度と会えない気がしたんだ
数秒間を永遠に思うくらい
バッグを揺らしたまま走っていた
一言目なんて言うかなんて
決めるどころか思いついてないが
君が帰る前に
叶うならこの瞬間だけ、時よ止まれ

放課後、下駄箱の中に
手紙なんて入れられない
折れた踵直したスニーカー
掲示板に置き去りの折り紙
もう縁がない電話ボックスも
映画のセットのようだろう

鳥に強い追い風が吹くように
不意な恋に故意、覆い被すように
夕陽が綺麗と話す君を思い出した

二分経ったくらいか
汗ばんだシャツに気付いていた
駅まであと一分もないのに
君の後ろ姿、小さく見えてた
改札の奥、歩いて行った
ついに踏切鳴り出してしまった
遮断機が閉まる前に
叶うならこの瞬間だけ、時よ止まれ

中庭の蝶々や削れたチョーク
汚れた青い如雨露
自転車小屋の錆び
蛇口で溢れた水
はしゃいで自転車落ちそうになったこと
あの日の二人の帰り道を
一人走っていた

間違いに間違いがなくたって
答えなきゃ間違いもないように
この問いにもう一度挑戦するなら今しかない

最後の数十秒間だ
夢中で階段駆け上がった
到着した車両に乗る君が
跨線橋からはっきり見えてた
発車のベルが鳴り響いた
扉が閉まる音と同時
やっと着いたホーム
車内の君と目が合っていた

窓越しに通りすぎる君が
僕の後ろ指差して何か言った
立ち止まったままで
僕は思わず振り返った
そこにはあの日見たのと似た

綺麗な夕陽があった



Credits
Writer(s): Tomomi Shiiki
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