Hasami

身を守るすべを知らなくて
引き出しのはさみを取り出した
鈍く光った表面に
本当の私が写っている

あなたに向ける勇気は無いが
気休め程度になるだろう
憂鬱の類いを切り裂いてしまえば
凛として立ってられるのに
恥じる心さえ切り裂いてしまえば
大胆に生きてゆけるのに

冷たいはさみ 背中に当てれば
あの日と同じトリハダ
冷たいはさみ 背中に当てれば
何故だろう火傷よりも熱い

交差する二本の刃が
真ん中できつく抱き合えば
暗闇でさえも切り裂ける
美しいひとつのはさみになる

あなたは返事をくれるでしょうか
身勝手な私の申し出に
感性の類いを切り開いて行ければ
真夜中も正気でいれるのに
あなたと対をなして世界を見れば
「完全」になれる気がするのに

冷たいはさみ 背中に当てれば
あの日と同じトリハダ
冷たいはさみ 背中に当てれば
何故だろう火傷よりも熱い

身を守るすべを知らなくて
引き出しのはさみを取り出した

何故だろう

冷たいはさみ 背中に当てれば
あの日と同じトリハダ
冷たいはさみ 背中に当てれば
何故だろう火傷よりも熱い



Credits
Writer(s): Nagisa Kuroki
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