青き伯爵の城

朧気な... 記憶を... 辿って...

曖昧な... 自分を... 描いた...

どんな... 顔で... 笑い... どんな... 声で... 歌ったのか...

お気に入りの... 白い... 華飾衣が... 何故... こんなに... 緋いのか...

嗚呼... そうだ... 私は...
彼に... 殺されたんだっ... た...

伯爵は何時からか 青髭と呼ばれていた
私が嫁いだ時分には もう既に呼ばれていた
あんなにも優しい眼差しが 暗い色を帯びたのは
染み付いた鉄の匂いと 血の匂いのせいかしら?

嗚呼 夫は私を愛してない 気付かない振りしてきたけれど
もう これ以上は偽れない 私は誰よりも愛していたから

過ぎ去った季節の 長い夜の中で 貴方の瞳の奥で
抱かれていたのは 愛されていたのは 本当は誰なのかしら?

決して戻せない季節の 長い闇の中で 禁じられた部屋の奥で
寂しさ埋めるように 虚しさ燃やすように 不貞の罪を重ねた嗚呼...

誓いを破られた事に腹を立てたからなのか、
愛していたからなのか、今ではもう判らない。

最初の妻を殺したとき、理性も共に死んだのか、
新しい妻を娶っては犯し、犯しては殺した...。

どれ程 信じて祈っても 救ってなどくれなかった...
例え相対者が神でも 唯 穴さえあれば 嗚呼 貫いてくれよう――

《私の槍で》!

彼の留守の間に 宝部屋を回る
開けたことのない 部屋が気になっている
娘の耳元で 私はこう囁いた――

黄金の鍵の、禁じられた部屋には、
取って置きの宝物が隠されているわ...

そう その鍵穴に 挿れたら 回せばいい
もう すぐ出ちゃうでしょ 私達の【屍体と衝動】

嗚呼 女が本当に抱いて欲しいのは 肢体ではなく魂なのよ
罪な人ね でも 愛しい人よ

哀しみは 憎しみじゃ 決して癒せないわ
宵闇に唄が 響くだけ
貴方の喜劇を今 終わりにしよう!



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