Kaerutachi No Uta

生ぬるい夜の水辺を
ゆっくりとなぞる とろけた月明かり
神様の声におびえて
深い井戸の底 丸い宇宙見上げ歌う
一匹のかえる

誰も聴いちゃ いないけれど
草木の呼吸に メロディ這わせて

けろけろけろけろ 楽しそうに かえるは歌う
縛られず誰にも 邪魔されず 好きな歌を歌う

「素敵な歌声を もっと聴かせて。」
暗い井戸の底 灯りを運ぶ蛍

初めて差しのべられた 期待の声に
少しおどけて 真っ赤なベロを垂らす

君が聴いて くれるのなら
しっぽの光に BPMを合わせて

けろけろけろけろ 嬉しそうに かえるは歌う
ゆらゆら舞う 蛍のダンスに 見惚れながら歌う

やがて 井戸から灯る 光につられ
色んな かえるたちが 集まりだし
あたたかい声と つめたい声の 思惑の粒が 投げ込まれ
水辺を 波だたせてゆく

けろけろけろけろ 孤独だった かえるのうたが
気づけば 賑やかな輪となって 星空を震わす
けろけろけろけろ 悩みながら かえるは歌う
ほんとの気持ち を隠したまま

なるべく 好きな歌を歌う

そして月日は経ち
穴底の歌声は消えうせ
やがてまた別の穴底から
新たな かえるの歌声が



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